外為市場の日々の売買フローは大半が銀行間


外国為替市場は、一握りの大手銀行が取引を支配する状況はかつてないほど強固で、それが揺らぐ気配は見えない。


ただ水面下では、いくつかの新興企業が大手行の覇権に挑戦しようとしている。
彼らが提供するのは、資産運用会社や年金基金、保険会社などが銀行を介さずに取引できる場で、顧客のコストを軽減する一方、比較的高い収益が得られる。


調査会社コアリションの推計では、外為市場の日々の売買フローは大半が銀行間で、中でもシティ(C.N)、JPモルガン(JPM.N)、バンク・オブ・アメリカメリルリンチHSBC(HSBA.L)、UBS(UBSG.S)の取引高の合計シェアは2012年の35%から足元で約45%に上昇した。


新興企業側は、銀行は運用会社などの取引パターンを読み取って、よりもうかる価格での注文を獲得できると主張し、銀行を経由せずに直接投資家同士が取引すれば毎年数百万ドルの節約が可能で、外為取引コストを最大50%を減らせると提案している。


取引コストは規模や通貨の種類、流動性状況や市場環境に左右されるが、中堅クラスの資産運用会社が2500万ドル規模のユーロ/ドル取引を大手行経由で行う場合、1─2ピップのスプレッド、つまり500ドル相当を支払うことがあり得る。


市場を支配し、高い信用力があるからこそ、顧客にとって最適な価格を最も安全な形で提供できる、というのが大手行の言い分だ。


それでも現在は外為取引プラットフォームを手掛ける業者が80かそれ以上存在し、毎年1社か2社が新規に設立されている、とマーケットファクトリーは説明する。
同社は顧客同士が直接取引するシステムを提供する企業だ。


こうした新興企業の台頭を後押ししているのは技術面でのコストの低下で、国際決済銀行(BIS)は2000年代初めに1億─1億5000万ドルだった取引プラットフォームの開発費用は、500万─1000万ドルまで下がったとみている。


市場参入の準備を進めているニューヨークのヘッジプールの創業者ジェイ・ムーア氏は、銀行の提示価格には信用コストや市場リスク、資本コスト、プラットフォーム利用手数料、社員の給与などまで含まれていると指摘。
「われわれは機関投資家が相互に流動性を調達し合えるようにしてこれらのコストを大幅に下げることを目指している」と語り、今後は8月に事業を開始したロンドンの24エクスチェンジなどの業者が競争相手になるとの見方を示した。


<大きな負担>

投資家が通貨のヘッジ取引をする場合、大抵は銀行のプラットフォームを利用する。
そこで間断なく流される提示価格からどれか1つを選択するのだ。
あるいは複数の銀行が提示価格を競う形のCMEやリフィニティブといった「マルチディーラー」プラットフォームも使われる。


外為取引で運用サイド向けの銀行のシェアを抜き出したデータは簡単に入手できないものの、イングランド銀行(英中央銀行、BOE)によると、世界最大のロンドン市場では昨年10月の全スポット取引の74%は大手ディーラー6社が占めた。
またニューヨーク連銀のデータからは、ニューヨーク市場のスポット取引の4分の3は大手ディーラー4社が握っていることが分かる。


新興企業の説明に基づくと、通貨の取引「スプレッド」は近年急速に縮小したとはいえ、投資家はしばしば、大量注文によって価格が不安定化するという「マーケットインパクト」のコストについて大きな負担を強いられている。


今年プラットフォームの運営を始めたロンドンのシージFXのクロード・グレ最高経営責任者(CEO)は、最近のユーロ/ドルの大口取引のマーケットインパクトに絡むコストは、スプレッド支払いコストの2.5倍に達するとの分析結果を明らかにした。


グレ氏は、これに対してシージのプラットフォームで売買フローの20%を相殺する投資家は、年間で数百万ドルを浮かせることができると強調した。


<課題>

新興企業が直面する最大の課題は、決済リスクと事業運営におけるさまざまな規格の違いだ。
例えば顧客の資産運用会社のシステムは、法定書類などの部分で統一性がない。


外為市場は取引所形式ではなく、いわゆる相対取引であるため、注文執行から受け渡しまで2日間の信用エクスポージャーも発生する。
これは大手行を取引相手とする資産運用会社にとって特に心配はないが、新興企業との取引を敬遠する要素になっているとの声も聞かれる。


ニューバーガー・バーマンの通貨運用マネジングディレクター、ユーゴ・ランチョーニ氏は、大手行はこうした理由から引き続き外為取引を支配しており、10年先には事態が変わるかもしれないとしても、当面は新興企業は非常にニッチな参加者にすぎないと解説した。

 

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